PT志望の学生
こういった理学療法士の学校の面接の対策をしたい人向け。
「そんなん、自分で調べて自分の頭で考えてみーや!」と面接官は思うかもしれないけど、ネットで調べられたら超効率的だし、その時間はもっと別のことに当てた方がよっぽどいい。
だから本記事では「PTとOTの仕事内容の違い」について語ります。
本記事の信頼性:私は平成21年に国家資格を取得した10年目のOTです。PTとタッグを組んで患者様を担当し、PTとOTの仕事の違いをずっとみてきました。だから正しい情報が提供できると思います。
目次
作業療法士の定義って?

定義は2種類あります。法律で定めた作業療法の定義と、日本作業療法士協会が定めた定義です。
作業療法士法の定義
昭和40年に定められた定義はこちらです。
「作業療法」とは,身体又は精神に障害のある者に対し,主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため,手芸,工作,その他の作業を行なわせることをいう.「作業療法士」とは,厚生労働大臣の免許を受けて,作業療法士の名称を用いて,医師の指示の下に,作業療法を行なうことを業とする者をいう.
OT協会の定義
2018年からOT協会の定義が変更となりました。新定義は以下の通りです。
新定義:
作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.
旧定義はこちら。
作業療法とは,身体又は精神に障害のある者,またはそれが予測される者に対し,その主体的な生活の獲得を図るため,諸機能の回復,維持及び開発を促す作業活動を用いて,治療,指導及び援助を行うことをいう.
ずっと思ってたけど、「応用的動作」とか「主体的な生活」って言葉がわかりづらすぎます。
だから、結論として定義は「作業活動を用いて治療するんだな」くらいの認識でOKです。(こんな風に言ったらエライ人に怒られるかな…)
作業療法士の仕事内容
大まかな流れ
まずは大まかな流れを説明します。
新規の患者様がオーダーされ、担当になった時の流れ
①処方箋・DrカルテやNsカルテの情報を見て情報収集。
↓
②初回介入。挨拶と身体・精神面の評価をする 。
↓
③PT・OT(・言語聴覚士ST)が初回に入り、情報を共有しながらリハビリ計画書を作成する。
↓
④それぞれが治療内容を決め、患者に説明し、20〜60分の治療をほぼ毎日行う。
次に④のそれぞれの治療内容でOTはどのようなことをしているのか、具体的にみていきます。
具体的なOTの仕事内容①腕の麻痺や関節拘縮などに対する訓練

作業療法士は腕の麻痺などに対する訓練を行います。具体的には以下の通りです。
・ 動かしやすいように、関節をほぐす
・ (全く動かない人の場合)上肢の関節をOTが動かす
・ (ちょっと動く人の場合)道具や環境を整備して動かす訓練をする
・ (動くけど遅い人)麻痺の回復を促すための反復動作訓練をする
・ (細かい動作ができない人)道具や手工芸を利用して、細かい動作の訓練を行う
具体的な内容②応用動作の獲得に向けた訓練

応用動作というのは、寝起き・座る・立つ・歩く・走るなどの基礎的な動作ではない行動全般を指します。
具体的には…トイレ,着替え,食事,入浴,洗顔,身だしなみを整える,洗濯,家事,洗い物,掃除,ガーデニング,洗車,復職に向けた仕事に必要な動作(例えばPCや文字を書くなど),車の運転などのことです。
これらを全部完璧にこなせるようにするのではなく、退院先で求められるスキルに合わせて、訓練を決定します。
例えば…
・ 退院先が施設や介護をしてくれる人がいるなら、
「介助者にトイレがいきたい旨を伝えられて、ベッドから車椅子への移動ができると良い。
トイレ内でも手すりを使用して立ち上がりが維持できたら衣服の脱ぎ履きが楽にできる。
方向転換も便器と車椅子の位置を把握しながらできる必要がある」
などの目標で訓練を行う。
・ 仕事をしている人なら、
「職場に行くための手段を獲得(電車に乗る・車で行く・スイカをかざせる・階段やエスカレーターの乗れる)する。
仕事で最低8時間は集中し、座りっぱなしを維持できる必要がある。
PCもできるように」
これをクリアできるような治療プログラムを立てる。
このように一人一人に違う内容の目標と治療プログラムを立てていきます。
具体的な内容③高次脳機能障害に対する訓練

高次脳機能障害に対する訓練も行います。(これはSTが中心となって行う場合もあります)
高次脳機能障害とは一言でいうと、認知機能に障害が起きてしまった状態のことです。もっと簡単に言い換えると…
・ 体の半分が認識できない(だからよく半身だけぶつかる)
・ 食事左半分を残す(左側が見えてない)
・ 知ってる道なのに迷う
・ 集中力が続かない
・ スケジュールを立てられなくなってしまった
・ 病気以前のことは覚えているのに、新しいことはすぐに忘れてしまう
・ くしや歯ブラシが何かはわかるのに、使い方がわからない
・ 頭ではわかってるのに、言葉で表現できない
・ 脈絡のない言葉を喋ってしまう
・ 温厚だったのに、怒りっぽくなった
もっとたくさんありますが、脳に障害を受け、今まで当たり前にできてたことができなくなったり、性格までをも変えてしまうのが高次脳機能障害です。
訓練せずに放っておいたら、退院後に苦労してしまいますよね。だから訓練でできる限り改善していきます(でも改善しないものも多いのが辛いところ…)。
訓練内容はこんな感じ。
・スケジュールが立てられない人に対して、難易度の低い作業活動を訓練として行う。
例えば折り紙の山を作るとする。折り紙の本や折り紙を用意し、本から山の作り方のページ見つける。そして見ながら4工程ほど折る。これだけでも数多くの工程を行う必要がある。
そして難易度を上げていき、徐々にスケジュールを立てるスケールを大きくさせることが治療につながる。
・ ご飯を半分だけ残してしまう人に対して、お手玉の移動を行わせる。
机の上に20個のお手玉を見えない側に置く。全て見える側に移動してもらうのだが、ポイントは数は伝えないこと。仮に10個で「移動し終えた」と言った場合、もっとよく探してもらうことになる。
これは見えない半分側への意識を向ける訓練になる。
この訓練も②と同じで全て解決しようとするのではなく、患者が退院した先で必要な技能を何かを考えて訓練を考えていきます。
まとめると、作業療法士の仕事は、腕の関節訓練や、日常生活で必要な動作の獲得、高次脳機能訓練などを行なっています。
OTとPTの役割の違いは明確にあるか?

PTもOTも目指すところは【患者の望む退院後の生活】に向かって治療を組み立てます。
その内容が基本動作がメインか、応用動作がメインかの違いです。もちろんかぶる部分も多々あります。
病院でのPTの仕事は基礎動作の獲得です。具体的には「寝る、起きる、立ち上がる、座る、歩く、走る」などが当てはまります。反対に作業療法士に求められるのは「退院先の日常生活で必要な技能全部」です。
文章だとわかりづらいので実際の治療で説明します。先ほど具体的な仕事内容②の時にも出てきた具体例で考えていきますね。
介助者にトイレがいきたい旨を伝えられて、ベッドから車椅子への移動ができると良い。
トイレ内でも手すりを使用して立ち上がりが維持できたら衣服の脱ぎ履きが楽にできる。
方向転換も便器と車椅子の位置を把握しながらできる必要がある
この中でベッドからの車椅子移動や、トイレ内で立ち上がりを維持すること、方向転換で数歩歩くことなどは、PTの訓練内容。
介助者にトイレに行く旨を伝えること、ズボンの脱ぎ履きやふく行為、便器と車椅子の位置を脳内で処理するなどがOTの訓練内容にあたります。
つまり、PTとOTの役割は明確に分かれているわけではなく、【患者が退院後に必要な日常生活の技能】をPT,OT(,ST)が協力して獲得していく、向かって行く方向性は同じということが言えます。
面接でOTでなくPTを目指した理由は何?と聞かれた時の回答

ぶっちゃけ何でもいいです(笑)正直働いていない人にはPTとOTの人との違いはわからないから。
この質問で面接官が問うてるのは「志望者のあつい想いがあるのか?」だけなので。
とは言いつつ、傾向としてよくある回答を載せておきます。
① 自分が怪我をした時に理学療法士に世話になったから
② 家族・友人・親戚などが理学療法士に世話になったから
③ スポーツに関わる仕事がしたいから
どの回答をするのでも大事なことが一つあります。それは…
なぜ自分が将来の仕事を目指す決意をしたのかを感情を盛り込むことが大事
決心するには感情が大きく動いたエピソードがあると説得力が増します。
例えばあなたなら、以下のAとBのどちらを採用したいですか?
Aさん:高校1年のときに靭帯損傷をして整形外科の理学療法士に半年お世話になっていく中で、自分も怪我で困っている人の役に立ちたいと思い、志望しました。
Bさん:もともと中学からサッカーをしていて、高校1年のときに強豪校に入学し、サッカー部に入部しました。レギュラーを決める時に努力が認められ1年でレギュラーになれたのですが、膝を壊してサッカーができなくなってしまった。悔しくて悔しくて毎週リハビリに通いました。その間もサッカー場を横目に、「本当はあそこにいるのは俺だったのに」と余計に悔しくなりました。リハビリが成功し、2年になって再びレギュラーになれた時は本当に嬉しくて嬉し泣きしてました。だから、同じように怪我でスポーツができなくなった人を1日でも早く治すのに関われる理学療法士になりたいと決意しました。将来はスポーツ分野が盛んな整形か、スポーツ選手のトレーナーを目指していきたいです!
100%Bさんを選びますね。もっとも重要なのが「感情」が入っているかどうか。悔しい、嬉しい、絶望、歓喜などが入ると、志望動機に説得力が増します。
面接では、「膝を痛めたからPTになりたい」ではなく、「膝を痛めてどんな感情になったからPTになりたい」を伝えていきましょう。もし自分が怪我をしたことがない人はこんなエピソードがオススメです。
実習をした時の担当した患者の気持ちを代弁する
あなたが計半年間行った実習先で担当した患者さんは、どんな気持ちでリハビリに臨んでいましたか?
例えば…
私が実習で担当した患者さんは50代男性で、まだお子さんが大学生でした。俺が働かないと息子が大学を卒業できない。子供を育てるのは俺の使命。だから復職を早くしたいんだとおっしゃっていました。事実その患者さんは理学療法訓練以外の時間には病室の手すりやベットで筋トレなどの自主トレーニングを一日中行っていましたのが今でも忘れられません。
理学療法士は、事故や怪我でおった怪我や後遺症を治すだけでなく、その人の人生を背負っていく責任があると感じました。
だから私は患者さんの人生をサポートできる理学療法士になりたいと思い、志望しました。
このように患者さんの心を動かす原動力や、人生を支えるなどのエピソードがより具体的にあると、説得力が増します。もし、実習中は緊張してそんな患者さんの心を知る余裕がなかったという人は、ボランティア活動をしてみるのも一つの手。市の福祉課に問い合わせれば、障害を持つ方のボランティア活動(短期1日から)の紹介をしてもらえます。
そこで地域に暮らす障害を持つ方の暮らしを目の当たりにしたり、本人と話したり、そこの職員(もしくはボランティア歴が長い人)に話を聞くことも、「障害のある方の人生」を知ることができますよ。
理学療法士と作業療法士の違いを答えるのは簡単という話
この記事を読んで、OTとPTの違いを答えるのは「簡単」と思った方もいると思いますし、事実簡単です。
ただし、面接官は両者の差に答えられることよりも、「PTになりたい熱気持ちがあるかどうか?」「人の心を考えられる人なのか?」などを重要視していますので、そちらの理由を答えられるようにしておきましょう。

面接に強くなりたい人のための本も載せときます。

https://rietaro.com/pt-kaigyo-nensyu