本記事では脳梗塞後遺症に対する治療が成功した実例を紹介します。
★この記事の信頼性
筆者は作業療法士歴10年め。様々な脳梗塞の人の治療をしてきました。
その中で最も記憶に残っているのが、脳梗塞発症より8ヶ月目、歩けるようになったけれども、右腕と手の麻痺が残ってしまった男性でした。
その方は週1・半年間のリハビリを行った結果、腕が頭まで上がり、包丁で野菜を切って料理をできるまでに回復しました。
脳梗塞発症より8ヶ月目の男性がどのようにして「脳梗塞の片麻痺が改善したのか」について具体的な治療法を紹介していきますね。
発症8ヶ月目の脳梗塞男性の手の治療内容
私が行った治療法は主に3つです。
①スプリントを作る
②分離運動を促す
③関節に遊びを作る
①スプリントを作る
短母指対立スプリント(樹脂を使った簡易的な装具)を作成し、装着し訓練を行ったところ、飛躍的に麻痺が回復しました。
引用:作業療法だより
私が作成したスプリントの画像は手元にないのですが、上の写真のように樹脂が全部を覆わず、親指の部分のみフリーに動くように制作しました。下の手書きのイラストをご参照ください。
この装具をつけた患者さんは『意識しなくても手に力が入る』『腕がいつも以上に挙げられる』『ドアに近づいたら、左手じゃなく、自然と右手で開けたくなる』とおっしゃっていました。
これを毎日装着した状態で運動してもらった3ヶ月後、麻痺のある側の手で包丁を握り、釘付きのまな板で野菜や肉を切り、カレーを作れるようになりました。
②分離運動を促通する
分離運動とは二つの関節が異なる動きをすることなのですが、この動きを繰り返しリハビリの訓練や日常生活で行なってもらいました。
・ 腕を上げた状態で肘を曲げ伸ばしする
・ 肘を曲げた状態でバイバイする
・ 腕を高く上げた状態でボールを握ったり離したりする
・ ティッシュの側面に手掌を這わせ、バイバイする 等
この分離運動は肩・肘・手首・指の動きを組み合わせられるので、色々なパターンで行わせました。
③関節に遊びを作る
『遊び』というのは、関節の末端を引っ張った時に出るわずかなゆとりの動き(遊び)のことです。
この遊びの動きを関節を引っ張ったり固定しながら出していきます。
訓練内容としてはこのようなことを行います。
・ 手首の腕側を固定し、手のひら側を弱く牽引し、上下に軽く動かし関節の動きを出す
・ 手のひらにある指の骨を、片方は固定、もう一方を少し上下に動かして、全部の指も同様に繰り返して動きを出す
麻痺手の治療は作業療法士に指導を受けること
本記事を読んで、自己流もしくは家族にやってもらうのは危険です。なぜなら間違った動かし方をして余計に悪化する恐れがあるからです。
それとスプリントは一般には販売されてないので、必ず病院勤務の作業療法士に作成してもらってください。
①スプリントを作れるかを電話で聞く
②担当作業療法士は経験年数と実績で選ぶ
③自宅から通えない場合は病院から出ている訪問リハビリを利用する
スプリントを作れるかを事前に電話で確認する
受診する予定の病院に電話で「手のスプリントをOTが作れるか?」を確認しましょう。
担当作業療法士の経験年数と実績を問う
その病院のOTのスプリント制作の実績があるかを確認しましょう。
毎週作成している人が好ましいですが、3ヶ月に1つでも許容範囲です。
おすすめな病院は「手の外科外来」「リウマチ科」があるところです。スプリント作成の経験が豊富な可能性が高いです。
さらに診察の時、手のスプリントの作成が一番得意な作業療法士に担当してもらえるように依頼すれば完璧です。
自宅から通えない場合は病院から出ている訪問リハビリに問い合わせましょう
介護保険制度を使って訪問リハビリで作業療法士に自宅に来てもらうこともできます。
ただし訪問看護ステーションの訪問リハビリにはスプリントを作成するキットが置いてない可能性が高いので、スプリントを作成できる作業療法士を派遣してもらうようケアマネージャーに伝えましょう。
簡単!自宅でできる自主トレーニング方法
分離運動を促通させる運動をいくつか紹介します。
テッシュ箱の裏を縦に撫でる
ティッシュ箱を指を伸ばして手のひらで触り、野菜をトントンときるように手首を動かします。
大事なのは手首だけ動かすことです。手首の分離が促されます。
さらに応用として、肘から手首を一直線(小さく前ならえのポーズ)にすると、手首がさらに固定されて難易度が上がります。
手を上にあげ、肘を伸ばした状態でボール握り
ボールを手を上げてニギニギします。
麻痺をしていない方の手を使っても構わないので、麻痺側の腕を高く上げ、持っていたボールを握ったり、緩めたりして、指の分離を促します。
自主トレの応用!書籍を見て分離運動をこなす
書籍を見ながら分離運動を数多くこなしましょう。理由は、数が多い方が神経が促通され、回復も促進するからです。
上記に分離運動の例を2つ上げましたが、腕の関節は肩、肘、手首、指とあり、組み合わせれば無数の分離運動ができます。
時間短縮のため、書籍を見ながら分離運動をこなしましょう。
↑こういう握りやすい道具は、スプリントを作成するまでの繋ぎにいいかもしれません。装着しながら自主トレを行なってみてください。
脳梗塞の後遺症で悩んでる方、スプリントに挑戦してみてください
脳梗塞の後遺症にスプリントが効果的だったという話でしたがいかがでしたか?
脳梗塞発症から半年経つと、回復は難しいと医師から言われている人は、諦めずに挑戦してみてください。
スプリントを使ってよかったよ!という人の感想やコメントもお待ちしております。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。