本記事は実習を控えたリハビリの学生向けです。神経難病系の病院に持っていくと参考になる書籍を紹介します。
なぜこの記事を書こうかと思ったかというと、私も学生時代に同じような悩みを抱えたことがあるからです。
指導してくれたバイザーに「文献が少なすぎる!」と怒られる→学校の図書館でパーキンソン病の書籍を大量に読んで帰宅時間が遅くなる→眠い目をこすりながらデイリーノートを書く→不十分なデキでまた怒られる…
そんな日々を繰り返した苦い経験が今でも忘れられません。そんな私が思うことは、実習前に教科書以外の文献を手元に置いておけたらすぐに調べられたのに、ということです。
そんなワケで、今回は同じように実習前でしかも神経難病系の病院に実習にいく方に向けて参考になる書籍を紹介します。学生のときの私が一人でも減ってくれると嬉しいです。
神経難病ってどんな症例のこと?
この記事に辿りついてくれた方なら今更な情報かもしれませんが、まずは神経難病はどのような病気があるかをまとめます。詳しくは厚生労働省指定難病一覧 概要 診断基準等 を見てくだされば一発でわかります。
・パーキンソン病(PD)
・脊髄小脳変性症(SCD)
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・多発性硬化症(MS)
・重症筋無力症
・筋ジストロフィー
等
神経難病の病院では、このような国に指定されている難病患者が入院・外来通院しています。指定難病には入っていませんが、ギランバレー症候群の方も入院されています。
要するに、神経難病は何百種もあり幅広い知識が必要ってことです。
私もそうでしたが、実習ではパーキンソン病が一番メジャーなのでケースになる場合が多いです。ただし経験を積ませるためにサブケースは別の疾患を担当する可能性が高い!なのでバイザー会議でケースやサブケースについて聞いて、調べておきましょう。
神経難病の病院実習でおすすめな本【パーキンソン病編】
神経難病で一番メジャーなパーキンソン病の書籍を5冊ご紹介します。
身体障害作業療法学1 骨関節・神経疾患編
こちらはOT向け。総論が多い書籍ですが、疾患ごとのOT評価・OT治療プログラム・環境設定がまとまっています。実際のプログラムも写真付きでわかりやすいです。
目次は以下の通りです。
第1章 基礎編
1 概論
2 作業遂行へのアプローチ
3 運動学習
4 知覚再学習
5 関節可動域・筋力へのアプローチ
A)関節可動域の基礎
B)筋の基礎
C)関節可動域と筋力へのアプローチ第2章 疾患編
1 脳卒中
2 脊髄損傷
3 関節リウマチ
4 骨折および関節疾患
5 手の外科
A)末梢神経損傷
B)手指の腱の損傷
6 熱傷
7 神経変性疾患
8 神経免疫疾患
1 疾患概要
2 作業療法評価
3 作業療法プログラム
□アクティブラーニング―症例から学ぶ引用:身体障害作業療法学1 骨関節・神経疾患編
神経難病領域のリハビリテーション実践アプローチ
こちらは丸々一冊神経難病に特化した書籍になります。神経難病患者に起こりうる障害や治療法・対処法などが詳細にまとまっています。
おおよその目次はこちら(全部書くと長くなりますので要約)
Ⅰ 神経難病リハビリテーションの概要
1 . 神経難病のリハビリテーション
2 . 療養環境整備とチームアプローチ
3 . 医療費助成制度と福祉制度
4 . 就労支援
Ⅱ 神経難病の障害像
1 . 運動機能障害
2 . コミュニケーション障害
3 . 摂食嚥下障害
4 . 呼吸障害
5 . 心理的課題とQOL
6 . 歯科・口腔衛生
7 . 歯科治療
Ⅲ 疾患別リハビリテーションの実際
1 . パーキンソン病(関連疾患としてPSPを含む)
2 . 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を含む)
3 . 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
4 . 多発性硬化症
5 . 筋強直性ジストロフィー,多発性筋炎などの筋疾患
Ⅳ 神経難病患者の在宅リハビリテーション
1 . 管理栄養士の立場から
2 . 介護福祉士の立場から
3 . 作業療法士の立場から
4 . 理学療法士の立場から引用:神経難病領域のリハビリテーション実践アプローチ
図説パーキンソン病の理解とリハビリテーション
リハビリ専門医とPTが書いたパーキンソン病専門の書籍です。パーキンソン病の症状が理解できるように大脳基底核の働きから詳細に説明されています。4大兆候「無動・姿勢保持障害・筋固縮・振戦」に対するリハビリの考え方がそれぞれ解説されいるのが良いですね。値段の割にはボリューミーな良書だと思います。
目次
第1章 パーキンソン病の概要と歴史
第2章 パーキンソン病を理解する
1.神経科学の基礎知識 大脳基底核の仕組み
1 解剖
2 構成
3 神経伝達物質と受容体
4 神経回路
2.パーキンソン病の原因
3.パーキンソン病の病態―神経回路の異常と進行に伴う病理学的変化
4.パーキンソン病の治療
1 早期パーキンソン病の薬物療法
2 進行期パーキンソン病の薬物療法
3 進行期パーキンソン病の治療―手術療法,遺伝子治療ほか第3章 パーキンソン病の主要症状のメカニズムとリハビリテーションの視点
1.無動
2.姿勢保持障害
3.筋固縮・振戦
4.自律神経障害
5.睡眠障害
6.強化学習・認知障害第4章 パーキンソン病のリハビリテーション
1.リハビリテーションの概要
2.歩行障害
3.嚥下障害
4.在宅生活支援とリハビリテーション(1)
5.在宅生活支援とリハビリテーション(2)
6.在宅生活支援とリハビリテーション(3)
7.在宅生活支援事例(1)早期経過例
8.在宅生活支援事例(2)手術例(DBS)
9.在宅生活支援事例(3)長期経過例第5章 パーキンソン病患者を支える制度
引用:図説パーキンソン病の理解とリハビリテーション
パーキンソン病診療ガイドライン2018
パーキンソン病に特化した書籍です。この本のすごいところは抗パーキンソン薬についても書いてあること!使用している薬剤名や副作用を調べることはもちろん大切なのですが、なぜその薬が治療薬として働くのか?を理解することがパーキンソンを治療する上で重要な要素となります。
ただしPT・OTのおおよその治療内容は書いてる(ROM訓練、捻転運動、エアロバイク、呼吸訓練、リズム歩行、上肢運動etc)あるが、具体的な訓練のやり方までは書いていないのがウィークポイント。
目次
序章 パーキンソン病とは
1.パーキンソン病の診断
2.パーキンソン病の疫学
3.パーキンソン病と遺伝子
4.パーキンソン病と環境因子
5.パーキンソン病の運動症状と非運動症状第I編 抗パーキンソン病薬,外科手術,リハビリテーションの有効性と安全性
資料1.各薬剤の特徴
資料2.L-ドパ換算用量
第1章 L-ドパ
第2章 ドパミンアゴニスト
第3章 モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬
第4章 カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬
第5章 アマンタジン
第6章 抗コリン薬
第7章 ドロキシドパ
第8章 ゾニサミド
第9章 イストラデフィリン
第10章 手術療法
第11章 パーキンソン病のリハビリテーション
第12章 公的制度・費用対効果第II編 Evidence Based Medicineの手法を用いた推奨
第1章 GRADEシステムを用いたエビデンスの質と推奨
第2章 CQ 1 早期パーキンソン病の治療はどのように行うべきか
第3章 CQ 2 運動合併症に対する治療について第III編 パーキンソン病診療に関するQ&A
第1章 診断,予後
第2章 治療総論
第3章 運動症状の治療
第4章 非薬物療法
第5章 非運動症状の治療
第6章 将来の治療などの可能性引用:パーキンソン病診療ガイドライン2018
やさしいパーキンソン病の自己管理
こちらは患者指導向けの書籍。自宅でできるエクササイズや誤嚥発生の仕組みなど、簡単なイラストで記載してあります。
目次
I章 パーキンソン病の基礎知識
1.パーキンソン病とは
2.パーキンソン病の原因と診断
3.パーキンソン症候群
4.認知症状
5.精神症状II章 パーキンソン病の治療
1.薬物療法
2.薬物治療における副作用・注意点
3.外科治療
4.心理療法III章 パーキンソン病のリハビリテーション
1.自宅でできる運動
2.飲み込み・しゃべり方の障害IV章 自宅での介護の要点
1.住宅改修・整備
2.看護の立場から
3.社会支援付録1.患者さん,ご家族の活動
付録2.Movement Disorder Societyによるパーキンソン病(PD)
の臨床診断基準‐要点と記入フォーム
付録3.症状日誌引用:やさしいパーキンソン病の自己管理
今回紹介した書籍やジャーナルを組み合わせれば実習は乗り切れる!
本記事ではPT・OTの実習におすすめなパーキンソン病の本についてまとめました。このあたりとPT/OTジャーナルを組み合わせれば実習のレポートの作成は十分できると思います。
→脊髄小脳変性症のおすすめ本はこちら(現在作成中)
→実習総論の記事はこちら